雑学

あなたの周りの「隠れサイコパス」を見抜け。関わると人生が壊れる『テイカー』の3つの特徴

はじめに:「いい人」がバカを見る世界から抜け出そう

「一生懸命やっているのに、なぜか自分だけが損をしている気がする」
「あの人は、上司の前ではニコニコしているけれど、裏では仕事を押し付けてくる」

もしあなたの周りにそんな人物がいて、あなたが日々疲弊しているなら、気をつけてください。
あなたは単なる「性格の悪い人」と付き合っているわけではありません。関わる人間のエネルギー、時間、そして成果を根こそぎ奪い取っていく捕食者、『テイカー(Taker)』にロックオンされている可能性があります。

ペンシルベニア大学の組織心理学者アダム・グラントの名著『GIVE & TAKE』によれば、世の中の人間は3つのタイプに分類されます。

  • ギバー(Giver): 人に惜しみなく与える人。
  • テイカー(Taker): 自分の利益のために人から奪う人。
  • マッチャー(Matcher): 損得のバランスを考える人。

最も恐ろしいのは、一見すると「いい人(ギバー)」に見えるけれど、本性は利己的な「隠れテイカー(詐欺師タイプ)」の存在です。

この記事では、あなたの人生を食い物にする「隠れテイカー」を見抜くための決定的な3つの特徴と、彼らから身を守るための唯一の戦略をお伝えします。これは、あなたのメンタルとキャリアを守るための防衛術です。

最も成功するのはギバーだが、最も「転落」するのもギバー

特徴の解説に入る前に、残酷な事実をお伝えしなければなりません。

アダム・グラントの研究によると、医学生やエンジニア、セールスマンなど様々な職種において、「最も成績が悪かったグループ」は誰だったと思いますか?

それは、お人好しの「ギバー(与える人)」でした。
彼らは自分の時間を犠牲にして他人の手助けをし、テイカーに利用され、燃え尽きてしまっていたのです。

しかし、話には続きがあります。「最も成績が良かったトップ層」もまた、「ギバー」だったのです。

成功するギバーと、搾取されて終わるギバー。その違いはたった一つ。「テイカーを見抜き、適切に対処できたかどうか」です。
つまり、あなたが成功したいなら、「いい人」をやめる必要はありません。ただ、「テイカーという害虫」を近づけないフィルターを持てばいいのです。

見逃すな!「隠れテイカー」の3つの特徴

あからさまに意地悪なジャイアンのようなテイカーなら、避けるのは簡単です。
厄介なのは、第一印象が良く、人当たりもソフトな「愛想の良いテイカー」です。彼らの化けの皮を剥ぐには、以下の3つのサインに注目してください。

特徴1:上には媚び、下には威圧的(レック・アップ、キック・ダウン)

テイカーの最大の特徴は、「自分に利益をもたらすかどうか」で人間を選別している点です。

そのため、権力者や上司(利用価値がある人)に対しては驚くほど腰が低く、愛想が良いのに対し、部下や立場の弱い人(利用価値がない人)に対しては冷淡で、支配的な態度を取ります。

これを見抜くための有名な指標が「レストランのウエイターへの態度」です。
あなたには笑顔で接しているのに、店員に対して「遅いよ」「水」などと横柄な口を利く人がいたら、警戒レベルMAXです。彼らにとって他人は「人間」ではなく「道具」なのです。

特徴2:「我々」と「私」の使い分けが巧妙

プロジェクトが成功したとき、テイカーはこう言います。
「(私が)やりました。私の実績です」

逆に、プロジェクトが失敗したり、トラブルが起きたりしたときはこう言います。
「(我々は)どうするべきだったか」「(君の)責任はどうなる」

テイカーは、手柄を独り占めすることに貪欲です。彼らは「チームの成果」を平気で自分の実績として報告します。一方で、リスクや責任からは巧みに逃げ、主語を「We(我々)」や「You(あなた)」にすり替えます。

企業の年次報告書を使った分析では、テイカー気質のCEOほど、自分の写真を大きく掲載し、文章の中で「私(I)」という言葉を多用する傾向があることが分かっています。

特徴3:写真は「自分中心」で撮る

これは少し意外な視点ですが、SNS時代の現代において非常に分かりやすい指標です。

アダム・グラントの研究チームがFacebookのアイコン写真を分析したところ、ある興味深い傾向が見つかりました。
他人との集合写真や、風景の中に自分が小さく写っている写真を使う人に比べ、「自分一人がドアップで写っている写真」を使っている人は、テイカーである確率が高かったのです。

もちろん、これだけで全員を決めつけることはできません。しかし、「自分を良く見せたい」「自分が中心でありたい」というナルシシズムは、テイカーの根本的な欲求と深くリンクしています。

  • 話をしていても、すぐに「私の場合は〜」と話題を自分に戻す。
  • 他人の話を聞いているようで、実は「次に自分が何を話すか」を考えている。

このような違和感を感じたら、その直感は正しいはずです。

テイカーから身を守る唯一の戦略「マッチャーになれ」

では、職場にテイカーがいた場合、私たちはどうすればいいのでしょうか?
「逃げる」のが最善ですが、仕事上の関係で逃げられないことも多いでしょう。

その場合、あなたがとるべき戦略は、「ギバー」をやめて「マッチャー」になることです。

マッチャーとは、「やられたらやり返す」「もらったらお返しをする」というバランス重視のタイプです。
テイカーに対して、無条件に親切にする必要はありません。彼らはそれを「カモがネギを背負ってきた」としか思いません。

ゲーム理論でいう「しっぺ返し戦略(Tit for Tat)」を採用してください。

  1. 基本的には親切にする(ギバーとして振る舞う)。
  2. 相手が裏切ったり、搾取しようとしてきたりしたら、即座に協力をやめる(NOと言う)。
  3. 相手が態度を改めて協力してきたら、再び親切にする。

「あなたには利用されませんよ」という毅然とした態度を見せること。これが、テイカーを遠ざける最強の結界となります。

まとめ:あなたの優しさは、使い分けるためにある

「誰にでも優しくしましょう」

私たちは子供の頃からそう教わってきました。しかし、大人の世界において、無防備な優しさは自滅を招きます。

あなたの時間、情熱、そして優しさは有限な資源です。
それを、感謝もしないテイカーというブラックホールに投げ込むのはやめてください。

あなたの周りの「隠れテイカー」を見抜き、彼らには毅然と接すること。
そうすることで初めて、あなたは余ったエネルギーを、本当に大切にすべき「ギバー」や「マッチャー」の仲間たち、そしてあなた自身のために使えるようになるのです。

さて、明日のオフィスで、誰が「ウエイターに横柄な態度」をとっているか、こっそり観察してみませんか? その視点を持つだけで、世界は今までと違って見えるはずです。