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日本暗号資産税制アップデート 2025 ――損益通算・繰越控除は実現するか
暗号資産(仮想通貨)取引の課税方式をめぐり、「損失をほかの金融所得と通算し、翌年以降に繰り越せるようにすべきか」がいよいよ本格議論の段階に入りました。現行制度では最大 55% の総合課税で、損益通算・繰越控除とも不可。2025 年の税制改正プロセスでどこまで進展するのか、最新動向を整理します。
1. 現行ルールの“痛み”をおさらい
- 暗号資産売却益は 雑所得 → 総合課税(最大 45%+住民税 10%)
- 損益通算不可:株・FX など他の金融損益と相殺できない
- 損失繰越不可:翌年以降に損失を持ち越せない
2. 2025 年プロセスで“テーブルに乗った”4つの改正案
| 論点 | 改正案 | 概要 | 主な後押し |
|---|---|---|---|
| 課税区分 | 申告分離課税 | 一律 20.315%(株式と同率) | CoinPost(3日前) |
| 損益通算 | 金融所得全体で通算 | 先物・株の損益と相殺可 | CoinDesk Japan |
| 損失繰越 | 3 年繰越控除 | 株式と同じ枠組み | 新経済連盟提言 |
| 課税タイミング | 売却・法定通貨交換時のみ | トークン間スワップ課税を簡素化 | CoinPost |
3. ここまで進んだ! 2025 年の“公式な動き”
- 与党税制改正大綱(2024 年 12 月)に「暗号資産課税見直し検討」明記
― CoinPost - 金融庁ワーキンググループ設置(2025 年 6 月 25 日)
― 金融庁資料 - 業界団体・新経済連盟が損失繰越を提言(2024 年 9 月)
― CoinPost
財務省・金融庁は 「2025 年夏に制度案を取りまとめ → 同年末の税制大綱に盛り込む」 スケジュールを示しており、最短で 2026 年 1 月適用が視野に入りました。
4. 実現シナリオを数値で検証
| ケース | 税率 | 損益通算 | 繰越控除 | 適用年 |
|---|---|---|---|---|
| A:業界要望 MAX | 20.315% | 〇 | 3 年 | 2026 |
| B:漸進型 | 20.315% | × | × | 2026 |
| C:分離課税見送り | 総合課税 | × | × | — |
大綱に “分離課税+損益通算” の文言が残れば ケース A/B のいずれか。外れれば来年度以降に先送り(ケース C)となる公算が大きいでしょう。
5. 投資家・事業者が今できる備え
- 取引履歴の整備:繰越控除を想定し、2023 年分から明細をクラウド保存
- 税務ソフト選定:損益通算に対応できる API 連携ツールを検討
- 法人 vs 個人の切り替え検討:法人課税メリットが薄れる可能性に注意
まとめ
2025 年は「分離課税+損益通算+3 年繰越」が初めて本丸の議題に載り、最短 2026 年施行も現実味を帯び始めました。
キーワードは 「夏の金融庁報告」 と 「年末の与党大綱」。この 2 つを乗り越えられるかが天王山です。アップデートを追いつつ、今のうちから取引データ整理とシミュレーションを進め、制度変更を機会に変える準備を整えましょう。
※2025 年 6 月 28 日時点の公開情報を基に執筆。実際の税務判断は最新の法令・通達をご確認ください。
