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パスワードリスト攻撃(クレデンシャル・スタッフィング)」を詳しく解説

はじめに:「パスワードを忘れるのが怖い」あなたへ

「通販サイト、SNS、銀行、動画配信……。全部違うパスワードにするなんて無理!」
「覚えられないから、全部同じ『いつものパスワード』でいいや」

その気持ち、痛いほどよく分かります。しかし、セキュリティの世界において、この「パスワードの使い回し」こそが、最も危険な行為であることをご存知でしょうか?

ハッカーたちは、あなたのパスワードを一生懸命「解読」したりはしません。もっと効率的な方法、それが『パスワードリスト攻撃(クレデンシャル・スタッフィング)』です。

この記事では、なぜ「使い回し」が命取りになるのか、その恐怖のメカニズムと、人間が楽をするための対策について解説します。

ハッカーは「解読」なんてしない

映画などで、ハッカーが黒い画面に向かって猛スピードでタイピングし、パスワードを解析するシーンがありますが、現実はもっと地味で残酷です。

彼らは、セキュリティの甘い「どこかの小さなサイト」から漏洩したIDとパスワードのリスト(名簿)を、裏ルートで入手します。

そして、そのリストに載っている鍵(パスワード)を使って、Amazon、楽天、Twitter、銀行など、手当たり次第に「他の有名サイト」でログインを試すのです。

「マスターキー」を作ってはいけない

これを現実世界で例えてみましょう。

  • 使い回しをしていない状態:
    「家の鍵」「車の鍵」「会社の鍵」「金庫の鍵」がすべて別々の形をしています。
    もし家の鍵を落としても、車や金庫は無事です。
  • 使い回しをしている状態:
    すべてのドアが「たった1本の同じ鍵」で開くようになっています。
    もし、あまり行かない「近所の倉庫(セキュリティの甘いサイト)」で鍵を盗まれたら? その鍵一本で、あなたの家も車も金庫も、すべて開けられてしまいます。

これがパスワードリスト攻撃の正体です。
「私は大手サイトしか使わないから安心」ではなく、「あなたが昔登録した、今はもう見ていないサイト」から鍵が漏れ、今使っている大事なサイトが攻撃されるのです。

ドミノ倒しを防ぐ唯一の方法

では、どうすれば良いのでしょうか? 答えはシンプルですが、実行は難しいと思われがちです。

「サイトごとに、全く違うランダムなパスワードを設定する」

「だから、それが覚えられないんだって!」という声が聞こえてきそうです。ご安心ください。今の時代、人間がパスワードを覚える必要はありません。

対策:パスワード管理ツールに「脳みそ」を預ける

Google ChromeやiCloud、あるいは専用の「パスワード管理アプリ(1Passwordなど)」を使いましょう。

  1. 覚えるのは1つだけ: 管理ツールを開くための「マスターパスワード」1つだけを死ぬ気で覚えます。
  2. あとはお任せ: 個別のサイトのパスワードは、ツールに「自動生成」させて保存します。`xK9#mP2$z` のような複雑な文字列を、人間が覚える必要はありません。

まとめ:あなたの「記憶力」に頼らないで

パスワードリスト攻撃は、あなたの「記憶力」と「面倒くさいという心」につけ込む攻撃です。

「全部同じパスワード」は、泥棒に合鍵を配っているのと同じ。
今日から、文明の利器(管理ツール)に頼って、すべてのサイトで違う鍵を使うようにしましょう。それが、あなたのデジタルライフを守る最強の盾となります。