ことわざ「泣いて馬謖を斬る」の意味と現代での教訓
公平さや規律を守るために、私情を押し殺して厳しい判断を下さなければならないときがあります。
そんな状況を表すことわざが「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」です。
歴史に由来した表現でありながら、現代のビジネスや日常にも通じる深い教えを含んでいます。
「泣いて馬謖を斬る」とは?
意味は「規律を守るために、愛する者や信頼する者であっても厳しい処分を下すこと」です。
個人的な感情に流されず、公正さを優先する姿勢を表します。
由来
このことわざの由来は、中国の歴史書『三国志』に登場するエピソードです。
蜀の名将・諸葛亮孔明には馬謖(ばしょく)という優秀な部下がいました。
しかし馬謖は戦略に従わず独断で行動し、大敗を招いてしまいます。
諸葛亮は深く信頼していた馬謖を罰することに心を痛めつつも、軍の規律を守るために斬首を命じました。
この出来事から「泣いて馬謖を斬る」という言葉が生まれたのです。
日常生活での例
1. 学校生活
部活動で仲の良い友人がルールを破ったとき。
本当はかばいたいけれど、顧問や部長として公平に処分を下さざるを得ない。
そんな場面は「泣いて馬謖を斬る」に当たります。
2. 家庭
親として子どもに厳しく接する必要があるとき。
例えば、約束を破ったらゲームを取り上げるなど、心苦しくてもルールを守らせるために実行するのはこのことわざの実例です。
3. 職場
信頼している部下のミスや不正が発覚した場合。
上司としてはかばいたい気持ちがあっても、組織の信用を守るために処分を下さなければなりません。
これも「泣いて馬謖を斬る」です。
ビジネスシーンでの応用
ビジネスの世界では「泣いて馬謖を斬る」の精神がしばしば求められます。
感情や人間関係よりもルール・信頼・組織全体の利益を優先する必要があるからです。
- 長年の取引先が不正を働いた場合、関係を絶ってでも信用を守る。
- 優秀な社員でも重大なコンプライアンス違反をしたら処分する。
- チーム全体の士気を保つために、身近な人を例外扱いしない。
こうした判断は厳しいものですが、長い目で見れば組織や自分の信頼を守るために不可欠です。
誤用されやすいポイント
「泣いて馬謖を斬る」は単に「大切な人を裏切る」という意味ではありません。
あくまで「公平さのためにやむなく厳しい処分を下す」ことを指します。
感情的な冷酷さとは違うので注意しましょう。
まとめ
「泣いて馬謖を斬る」は、規律や公正さを守るために、愛する人や信頼する人にも厳しい判断を下さなければならないという教えを伝えることわざです。
学校や家庭、ビジネスの現場など、さまざまな場面で心に響くメッセージを持っています。
時には「優しさ」よりも「厳しさ」が相手や組織を守ることにつながる──その難しい選択を象徴する言葉が「泣いて馬謖を斬る」なのです。
